違和感のある日本の株式市場
ここ1年程、日本の株式市場に対する違和感が消えません。確かに日経平均などの株価指数は高値維持されていますが、日々市場全体の値動きを見ながら売買を繰り返している私には、どうも市場全体に活気がなく、健全な状態ではないように感じられるのです。指数だけが無理やり高値で維持されていると言い換えてもいいかもしれません。そもそも「健全な市場」とは何なのでしょうか?
①多くの売り手と買い手が集まってくること
スーパーでもコンビニでもフリーマーケットでも何でもいいのですが、市場というからには売り手と買い手がいなければ話になりません。様々な商品が売られていて、それらを買おうと貧富を問わず老若男女が集まってくる市場はそれだけで魅力的です。これは資本市場にもあてはまります。
現在の日本の株式市場はどうでしょうか?
「日銀や年金資金以外に買い手はいないんじゃないか?だから指数だけが上がる。」と私は疑っているのですが、そう感じているのは私だけではないと先日確信しました。先週12月18日の日経平均の動きをご紹介します。
昼過ぎに妙な値動きがあるのがお分かり頂けるかと思います。このタイミングで日銀が新たなETF買い入れ枠3,000億円を発表しました。普通に受け取ればプラス材料ですから一瞬株価は上がっていますがすぐに下げに転じ、終わってみれば前日比300円以上の大幅安です。これは何を意味するのでしょうか?
日銀がこれまでに設けていたETF買い入れ枠は年間3兆円ですが、ここを見ると既にほぼ使い切っていると思われます。この状況でわずか3,000億円の追加額を発表したために、市場は日銀の政策に限界を見たのではないでしょうか?何も発表しない方がまだましだったかもしれません。しかし、わざわざ日銀の限界をさらしてしまいました。そして、市場は日銀やGPIFといった公的資金以外に買い手は存在しないという判断の下、売りに転じたのではないでしょうか?まして「金融緩和で景気回復する」なんて考えている市場関係者は皆無でしょうね。
②活発な取引(流動性)があること
売り手と買い手が集まってくるだけで実際に取引が成立しなければ意味がありません。これまたスーパーだろうが資本市場だろうが同じことですが、活発な取引がないと健全な市場とはいえません。
ところが、現在の株式市場は株価が上がっている割に売買代金が増えていません。ここから公的資金の売買を除くと、流動性はむしろ失われていると考えた方がいいでしょう。流動性があれば買いたい時に買えるし売りたい時に売れます。これは市場の持つ大きな付加価値ですが、今の日本の株式市場は流動性を失っており、公的資金の買いがなくなると売りたくても売れなくなるんじゃないかという恐怖を感じます。
③ルールが公平であること
何かトラブルがあった時に、あらかじめ決められた法に基づいて公平に裁かれる必要があります。当然だと思われるでしょう。でも今の日本の株式市場は、
- 東芝は未だに上場維持。粉飾決算という表現さえ使われない。
- 元村上ファンドの村上さんが強制調査?
という体たらくです。村上さんの件は、詳細が分かったら記事にしようと思っていたのですが、最近音沙汰がないですね。「終値関与による相場操縦」とのことですが、終値での売買はごく一般的なことです。引成注文や引指注文など、引けで売買する注文方法が普通に準備されているくらいですから。まして、売買する際に相場操縦する意図があったかどうかなど、心の中の問題で立証はまず不可能でしょう。一体何が悪いのか、私には理解不能です。
又、流動性があれば大量に売買しても価格は動かない訳で、流動性を奪った人間の責任はどうなるのかとも思いますし、日銀や年金資金を使って株価をつり上げることこそ、まさに相場操縦のような…。
お上の好き嫌いで有罪か無罪かが決まるような市場に誰も近づきたくはありません。私は村上さんに好意的な目を向けたことは一度もありませんが、気に食わないからといって皆でむやみにたたく風潮には、より一層の嫌悪感を覚えます。政治や世論に振り回されることなく、あらかじめ決められたルール(=法)によって裁かれねばなりません。
アベノミクスと騒ぎますが、株価だけ上げても大して意味はありません。市場に活気が戻ってこないと。投資家、そして日本市場で上場を目指そうとする経営者がいなくならないよう、健全な市場運営をお願いしたいものです。
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