おかしな日本財政破綻論⑤:まとめ
「日本の財政についてできるだけ簡潔に書いてみよう」とトライしたのですが、それでも随分長くなってしまいました(笑)。改めてポイントをまとめておきます。
そもそもの一般論として、
・ 先進国の自国通貨立て国債のデフォルトは起きようがなく、 債務残高(対GDP比)はデフォルトの指標にならない
・ 組織の借金は個人の借金と違って、必ずしも全額返済する必要はない
日本の財政については、
・ 日本政府の負債は大きいが、資産を含めた返済能力を総合的に判断するのが本来
・ 日本政府の負債は日本人/日本企業の資産になっており、日本全体でみると対外純資産が世界No.1
という点をおさえて頂ければと思います。決して私が楽観的な訳ではなく、ファイナンスの知識がある程度ある方には自明の理屈です。その証拠を1つご紹介し、日本の財政の話をひとまず終えたいと思います。
こちらをご覧ください。
2002年、バブル崩壊後の日本が米国格付け会社からさらなる格下げ(ボツアナと同じランク)を予告された際、日本の財務省が反論に使った意見書です。内容を一部抜粋します。
(1)日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。
(2)格付けは財政状態のみならず、広い経済全体の文脈、特に経済のファンダメンタルズを考慮し、総合的に判断されるべきである。例えば、以下の要素をどのように評価しているのか。
・マクロ的に見れば、日本は世界最大の貯蓄超過国
・その結果、国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化されている
・日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高
いかがでしょうか?
米国格付け会社と日本の財務省のどちらが正しかったか、2016年にいる我々からすれば明らかです。さらに言えば、この書簡を出したのは当時の黒田財務官。そう、今の日銀総裁なのですよ。政治家は知りませんが、財務省も日銀も日本の財政が危ないとは絶対に思っていないということです。
余談ですが、昨今の無茶苦茶な金融緩和を実行に移せるということ自体、財務省も日銀もこれっぽっちも日本の財政を不安に思っていない証拠です。そもそも金融緩和は減税と同じで、財政にとってはネガティブな政策なのですから。減税はできないけど金融緩和は積極的にやるというのは、国民に金を持たせておくのは無駄で、金融機関に金を渡すのは得策だと言われている訳で、我々はアベノミクスなどと持ち上げている場合ではありません。
日本の財政については、今回ご紹介したように個人でも比較的簡単に情報ソースにあたることができます。政府やマスメディアに惑わされず、ご自身の頭で考えたい方にはオススメです。
赤字は現象であって、破綻までの経過。日銀の国債残高は600兆円位で、国債の買い手は日銀で国民ではないです。
そもそも国民の資産は国民の物で、政府の財政と関係ないです。隣の人の資産は、隣の人の資産で、自分の赤字とは関係ないです。
いざとなれば海外に資産を持って行けます。
かつて日本政府の破産の時は戦後だったこともあって、天皇も含めて大半の国民は資産を政府に渡しました。
何を書きたいかというと、「政府の赤字は国民の資産とは関係ない」点です。今は日銀に国債を買わせて赤字は無限に増えていきます。ジンバブエみたいになります。
今年の政府の赤字国債は100兆円×2回で年200兆円くらいになりそうです。
赤字は国の収益力の低下の現象だと思います。
コメントありがとうございます。
さて、赤字はフローの話、資産はストックの話ですので、「政府の赤字は国民の資産とは関係ない」というのはその通りだとは思いますが、仰りたいことはそうではないのだろうと推察致します。資産と比べるべきは負債であり、誰かの負債は必ず誰かの資産になっています。必ず、です。
ブログ記事の繰り返しになりますが、日本政府は確かに資産<負債の債務超過の状態にあります。が、日本人と日本企業を足すと一転して資産>負債となり、世界第一位の対外純資産を持つに至ります。さらに、フローに目を向けると、日本は経常収支黒字国です(2019年は約20兆円くらいの黒字)。日本政府の赤字の大きさと日本国の収益力は全くの別物です。唯一のダメ息子「日本政府」を優秀なお父さん(日本人)とお母さん(日本企業)が支えている、というのがこの国の変わらない構図です。
ジンバブエのようになるには、この家族が解散する必要があります。それが現実的にあり得るかという話でして、私には想像がつきません。
日本人が全員資産をドルに換え、海外移住するような日が来るしょうか…。そうなれば日本にはダメ息子の日本政府のみが取り残され、仰る通り破綻します。
政府のBSは、政府の資産=政府の負債+政府の資本。政府の赤字と日本人の資産は関係ないです。世界は日本人だけではありません。
BSは複式簿記のルールの一つで「右と左を合う様な帳簿にしましょう」というルールです。そして期間を区切りましょうというのも簿記のルールです。
では簿記のルールではトヨタの資産は日産の負債とは関係ないです。国民の資産と政府の負債もBS上、なんら関係ないです。政府の負債の大半は日銀の資産です。政府の負債の一部は銀行の資産です。多くの国民は日本国債を買ってないです。つまり日本人の資産と政府の負債は関係ないです。政府に負債なくても国民に資産はあるんです。ではなぜ政府に負債あるのかというと、単に徴税権を行使すると公務員や政治家の生活は立ち行かなくなるので、ギリギリまで徴税してるのです。
政府と国民は親子ではないし仲間でもないです。日本人同士は家族では有りません。むしろ金銭において敵同士です。あなたの利益は他の人の損失ですし、逆にあなたの負けは誰かの利益です。
引き続き、コメントありがとうございます。
同じような疑問を持たれる読者はきっとおられると思いながら、返信しています。
ご存知の通り、日本国債の国内消化率は90%を超えています。確か、少し前まで95%を超えていたんじゃないかな。
政府の負債を支えているのは、日本人と日本企業ということになります。シンプルな例をお示ししましょう。
国民が銀行に預金する(国民にとっては資産、銀行にとっては負債)。
銀行が国債を購入する(銀行にとっては資産、政府にとっては負債)。
意図するかどうかは別として、日本人と日本企業は、円資産を保有することによって日本政府を支えているのです。
ブログ記事にも書きましたが、国=政府ではありません。
政府の借金を国内の人と企業が支え、トータルでは世界一の対外純資産を持ち、経常黒字の日本国。
そんな国が破たんするとはいかなる事態を想定しているのか?、元財務官僚、現日銀総裁の黒田さんも仰っている通りです。
そして、もう一点。
借金をすることは悪ではなく、借金をした相手は敵ではありません。
自己資本で支えきれない経済活動に資金を出してくれる主体は、むしろありがたい存在です。
金融機関にしても預金という名で金を貸してくれる人や企業を敵と思うことはありませんし、日本人や日本企業も普通に借金を活用します。
借金をした相手は敵でもなければ味方でもなく、借金という一つの経済活動の相手でしかありません。
貸す側から借りる側へは当面の資金という価値を、借りる側から貸す側へは金利という価値を、それぞれ交換しているだけです。
信用がなければ成り立たない経済活動でもあります。
究極的には「信用」こそが肝です。
日本人と日本企業は(今のところは)日本政府を信用しているという意味で、家族に例えたまでです。
もし日本人が本気で政府を敵だとみなしたら(円資産の保有をやめたら)、繰り返しになりますが日本政府は破たんします。
返信ありがとうございます。おっしゃることはだいたい分かりました。
経常黒字なので国内に政府の歳出も含めた資金と経常黒字分の資金は滞留しているということでしょうかね。
仰る通りです。
今回は有意義な議論をさせて頂いた上、このような丁寧な返信まで頂き、心より感謝申し上げます。
今後ともよろしくお願い致します。