円安にしても低迷を続ける日本の輸出
以前、消費支出に焦点をあて、GDPの約6割を占める国内消費が円安によって低迷しているという記事を書きました。その際、一方の輸出企業は円安で得をしているかというと、実はそうでもないんですというコメントを添えていたので、今回は輸出に焦点をあててみたいと思います。
マスコミによると「円安にすれば輸出が復活し、日本経済が復活する」そうですが、これは事実でしょうか?
そもそも、日本経済において輸出はGDPのわずか8~16%を占めているに過ぎません。さらに、輸出企業に勤めていた私からすると「円安で輸出企業の業績が良くなるなんて、いつの時代の話???」と直感的に分かる話なのですが、順を追って説明します。
例によって、1次ソースからデータをとってくることにします。
日本の基幹産業と言えば、やはり車でしょう。日本自動車工業会(JAMA)が自動車の輸出実績をこちらで公開しています。この数字をグラフにまとめると下のようになります。
青字の棒グラフがJAMAが公開している自動車輸出台数そのもの。季節変動の影響を除くためにその12ヶ月移動平均をとったのが赤字の線グラフです。既に一目瞭然かと思いますが、ここに為替(ドル/円)を重ね合わせます。
時系列で簡単に特徴をまとめると、
- 【リーマンショック前】輸出は好調、その間むしろ円高傾向
- 【リーマンショック~アベノミクス前】輸出は大きく傷つくも少しずつ復活、円高継続
- 【アベノミクス後】大きく円安に振れるが、輸出は低迷(米国経済は復活しているにも関わらず…)
これが事実です。
もちろん、円ベースの売上金額に目を向けると、販売台数が同じだった場合、1ドル80円が120円になれば数字は大きくなります。しかし、この為替レートで水増しされただけの売上で、業績が上向いたと判断する経営者はさすがにいないでしょう(広報という点でこの数字を利用することはあるかもしれませんが)。円安にこだわるなら、価格競争力をもった分、販売台数は増えなければなりません。
私は輸出企業で会社員をしていましたが、少なくとも責任あるポジションについてる方から「円高が困る」なんて話を聞いたことがありません。むしろ、”円安による輸出復活”というマスメディアの論調を不思議に思った私は、財務に精通したトップマネージメントの方から「為替による影響はほぼない、ゼロと思っていい」という言葉を直接聞いたことがあるくらいでして(笑)。
なぜ円安にしても輸出が増えないか?
それは、日本のまともな輸出企業はもはや価格競争なんてしてないからです。
次回に続きます。
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