法人運用:年末調整のしかたと業務効率化の工夫
昨年法人を設立したことで、諸々運用業務が増えました。それは給与支払だったり、源泉所得税や社会保険料の支払いだったり、会計帳簿の作成だったりする訳ですが、後述する諸々の工夫の甲斐もあって随分慣れてきました。残るは年末調整と法人税支払。これらをクリアすれば、とりあえず一通り経験したことになりますが、今回は自身の備忘録も兼ねて、年末調整の実務を紹介しつつ、法人運用を効率化する工夫や、法人税確定申告書作成に向けた会計ソフト利用方法を振り返ります。
年末調整の実務
年末調整の事務が増えるのは毎年12月から1月にかけて。会社員時代に扶養控除、配偶者特別控除、保険料控除等の書類を会社に提出しましたが、ここまでは全く同じです。まずは妻と私が従業員として同じように会社に報告します。この後、一言でいえば源泉徴収票を作成する作業を会社側でしなければなりません。ご丁寧に国税庁から「年末調整のしかた」という分厚い書類が送られてくるので、余程複雑なケースでなければ自力で対応できます。
従業員の所得税の精算
①「給与所得控除後の金額」の計算
給料から給与所得控除を引いた値で、国税庁からの送付資料に掲載されている表の通りに計算すればOKです。
②「所得控除の額の合計額」の計算
従業員からの提出書類を元に、社会保険料控除(給料から天引きしているもの等)、生命保険料控除(任意で入っているもの)、その他の控除(基礎控除、配偶者控除等)を全て足した値を求めます。
③「源泉徴収税額」の計算
①から②を引いた値が課税給与所得となり、この数字に5%から33%の税率(国税庁からの送付資料に計算式あり)をかけて算出所得税額を計算します。さらに住宅ローン控除や復興特別所得税(2.1%)の補正を加え、源泉徴収税額を求めます。
①~③の作業を従業員ごとに行い、「年末調整で求めた源泉徴収税額」と「月々給与から天引きしている源泉所得税の合計額」との間に差異があれば、12月の給与で調整します。
源泉徴収票の作成、提出
さらに、上記の計算結果を源泉徴収票にまとめ、従業員に配ると共に、税務署(所得税)と市役所(住民税)に提出しなければなりません。〆切は1月末。その際、税務署には「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」、市役所には「給与支払報告書(総括表)」といった書類を添付しなければならないのですが、いわば”表紙”みたいなもので、記入は特に難しくありませんでした。
私は先週市役所と税務署に書類を提出してきたのですが、全てが終わった後、足湯でほっこり。
さすが淡路島というべきか、洲本税務署の前にはなぜか足湯が(笑)。洲本温泉というれっきととした温泉で、近くの海沿いには温泉旅館もあるんですよ。地元のおじいさん、おばあさんから「こっちの方が温かくて気持ちいいよ」「お先に~」とか話しかけられながら癒しの時間を過ごして参りました。
慣れればそれ程苦労しなくてもできる作業ですが、この作業をいくら究めても会社の売上が増える訳ではなく、国や市の徴税業務を代行しているに過ぎません。当面は自力でやるつもりですが、将来もし従業員が増えるようなことになったら考えないといけないでしょうね。それこそAIに適した業務だと思うので、良いサービスの登場に期待したいところです。
法人設立にはメリットもありますが、年末調整をはじめ、ビジネスの本質とは全く別な所で新たな業務が発生するのも事実です。できるだけ効率化したい…と思って進めてきた中で、割とオススメできると思える内容を最後にまとめておきます。
業務効率化の工夫①:源泉所得税の納期の特例
通常、従業員から徴収した源泉所得税は、徴収した日の翌月10日を期限として税務署に納めなければなりません。つまり、毎月税務署とのやりとりが発生するのです。
しかし、従業員が常時10人未満であれば、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出することで、年2回まとめて納付することが可能になります。具体的には、
- 1月から6月分は7/10期限
- 7月から12月分は翌年1/20期限
となり、随分作業が楽になります。
税務署への提出は随時可能なようですが、私は法人設立時に「青色申告の承認申請書」と合わせて提出しました。青色申告も”欠損金の繰越控除ができるようになる”という大きなメリットがあるので(デメリットは特に見当たりません)、提出必須と言えるでしょう。
業務効率化の工夫②:信用金庫での口座開設
こちらは銀行口座比較として以前記事にまとめさせて頂きましたが、
- 社会保険料の口座振替に対応している
- 手数料が安い
という法人口座は実はあまりありません。大手都市銀行は社会保険料の口座振替に対応しているものの、法人口座の各種手数料が考えられないくらいに高いです。一方、ネット銀行や郵貯では社会保険料の口座振替ができません。で、お世話になっているのが信用金庫という訳です。
毎月わざわざ金融機関の窓口に行って社会保険料の振込を行う、などという手間はできれば避けたいものです。そんな私にとって、地元の信用金庫は今や大変ありがたい存在となりました。
業務効率化の工夫③:会計ソフトの導入
法人を運用する中で最も手間がかかる業務、それは会計帳簿の作成ではないでしょうか。年末調整に関して言えば、会計帳簿をつけていなくても対応できなくはないですが、法人税の申告ともなると日頃会計帳簿をつけておかないと大変なことになります。税理士さんに頼めば済むことではありますが、その分費用がかかります。
結論から書くと、私は会計ソフトを導入して全て自力でやっています。正直、会計の知識はほぼありませんし、今後真剣に勉強する気もありません(断言!)。法人を経済的に支える「財務:Finance」には関心があるものの、税金を計算するための「会計:Accounting」には興味が持てないのです(笑)。そんな私でも、1つ1つ仕訳の方法をネットで検索し、それを会計ソフトに雛形として登録していくことで、今では大した苦労もなく会計帳簿をつけています。インターネットって本当に素晴らしいです。固定資産や在庫を多く抱えたり、何か複雑なオペレーションをしたり、そういったビジネスでなければ、ネットと会計ソフトで自力でできる、というのが私の結論です。
私が使っている会計ソフトはマネーフォワードクラウド。
会計ソフトは弥生が有名ですが、一足先に独立していた友人の評判が芳しくなく、使いやすいと聞いたクラウドサービスを選択しました。詳細は下記をご覧下さい(※アフィリエイトリンクを利用しています)。
実際に使ってみて思うのは、PCにインストールして使うソフトよりも、クラウドサービスの方がいいというのは確かです。PCを買い替えてもデータ移行に悩むことはありませんし、将来PCを持たないという選択肢もとりやすくなります。私の場合、長期休暇をとって旅行している最中でもスマホで帳簿をつけられる、というのも大きなメリットとなります(笑)。
又、詳細は別の記事で書きますが、法人税の確定申告書も、MFクラウド会計のデータを全力法人税という別のクラウドサービスと連携させることで、ある一定のレベルまでは自動で作成できてしまうことも分かりました。なので、私は一切税理士さんのお世話にはなっていません。
最初仕訳の雛形を作るまでは、”ネット検索”という手間がかかります。しかし、一旦雛形を作ってしまえば、税理士さんにお金を支払うことなく、会計ソフトの費用だけで一連のオペレーションが可能になるので、十分検討に値するはずです。
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